青山学院大学 理工学部

DEPARTMENT研究室紹介

山崎研究室

指導教員 山崎 了 教授
田中周太 助教
テーマ 理論宇宙物理学研究
1.ガンマ線バーストと重力波
2.パルサー
3.宇宙現象を地上に再現する「実験室宇宙物理学」

研究内容

地球には、宇宙から宇宙線やX線・ガンマ線などの高エネルギー粒子がたくさんやってきています。 宇宙線粒子にいたっては、一粒子当たりのエネルギーが10ジュールのものもやってきています。これはサーブをうったときのテニスボールの運動エネルギーに相当します。最近では、ニュートリノや重力波も検出されました。このような高エネルギー粒子やガンマ線がどこでどのようにして生成されるのか未解明です。我々は、宇宙線、電波〜ガンマ線といった電磁波、ニュートリノ、重力波の発生源と考えられる高エネルギー天体現象について研究しています。詳細は理論宇宙物理学研究室のホームページをご覧ください。

ガンマ線バーストと重力波

ガンマ線バースト(GRB)とは、ガンマ線が、0.1秒から1000秒のあいだ、バースト的に観測される天体現象で、およそ1日1回の頻度で観測されています。GRBは100億光年以上の彼方からやってきます。 放射されるガンマ線の全エネルギーは莫大で、少なくとも地球1000個分の質量エネルギーにも及び、宇宙で最も劇的な爆発現象であるといえます。発見されたのは1970年代ですが、今でもその正体は未解明です。理論的・観測的制限から、GRBはわれわれに向かう相対論的ジェット(つまり、ほぼ光速で進むジェット)から生じると考えられていますが、そのジェットを生み出す中心天体はまだよく理解されていません。我々は、主に理論的に、ときには観測データの解析も行いながら、GRBの正体解明を目指しています。

ガンマ線バーストには継続時間の短いものと長いものがあります。継続時間の長いものは、特別な超新星爆発に関連する現象だと考えられています。ところで、宇宙が生まれてから間もない時期(数億年くらい)に生まれた星は超新星爆発を起こすような重い星が多く、これらは GRBを引き起こすと考えられます。GRBはとにかくとても明るい現象なので、GRBはたとえ宇宙の果てで発生したとしても観測できてしまいます。地球から遠く離れれば離れるほど、それははるか昔に起こった天体現象なので、いままでに検出された GRBやこれから検出される GRBの中には、もしかしたら、宇宙で最初にできた星(ファースト・スター)があるかもしれません。

一方で、継続時間の短い GRB は、中性子星2つがペアとなった連星中性子星や、ブラックホールと中性子星の連星が合体する際に発生すると考えられています。このときに中性子星やブラックホールといった強い重力場が激しく変動するときには、重力波というものが放射されます。これは、アインシュタインの一般相対性理論で予言された時空のさざ波で、2017年8月に史上初めてガンマ線バーストと同時に観測され、現在では重力波とガンマ線バーストとの関連を調べる研究が世界中で盛んです。日本でも大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」が稼働していますが、我々も KAGRA チームに参加し、重力波のデータ解析や運用作業に携わっています。とくに、ガンマ線バーストに伴う重力波が検出されればガンマ線バーストの理解が進むと期待しています。

パルサー

パルサーは、パルスを発する天体で銀河系内に2000個以上見つかっているありふれた天体です。正確な周期を刻むパルス放射は、星の回転に起因していると思われています(灯台効果と呼ばれています)。最短のもので1ミリ秒程度という短い周期の星の回転を重力で支えているため、パルサーの正体は半径10kmにして太陽程度の質量を持つという中性子星であり、ブラックホールに次ぐ高密度天体とされています。パルサーが回転中性子星であり、典型的に10億テスラという強力な磁場を持つことは状況証拠より明らかですが、パルサーという名の起源であるパルス放射のメカニズムは未だ謎です。太陽が太陽風というプラズマ風を吹き、100 AU(1AU=1億5000万kmです)を超える太陽圏という影響領域を形成していることがわかっていますが、パルサーもパルサー風を吹き、10万AUを超えるパルサー星雲という影響領域を形成しています。半径たった10 km(太陽は半径70万km)の天体が及ぼす影響領域としては巨大であり、このパルサー風のメカニズムもパルス放射と並び、未解決問題です。これらパルサー周辺で繰り広げられる相対論的高温プラズマ現象の未解決問題について様々な視点で研究を行っています。

宇宙現象を地上に再現する「実験室宇宙物理学」

当然ながら地球から遠くはなれた超新星残骸などの天体には行くことができません。そのため、それらの天体現象を明らかにする手段は、天体の放つ電磁波(電波、可視光、X線、ガンマ線など)やニュートリノ、重力波を観測することに限られます。しかし、限られた情報からすべてを解明するのは難しい場合が多いのです(だからこそ楽しいのではあるが)。ならば地球上に宇宙と同じものを作ってしまえば、自分たちで条件もコントロールできるし、天文観測とは桁違いに豊富なデータが得られて良いではないか!というのが実験室宇宙物理学という新しい学問分野です。例えば地上に大型レーザーを用いて希薄プラズマ中にできる衝撃波を作ることを目指した研究が行われており、我々もこの実験に参加しています。得られた実験データをもとに、ガンマ線バーストや超新星残骸での宇宙線粒子加速のメカニズムを解明することを目指しています。

研究室オリジナルサイト

研究者情報

教授:山崎 了
学位 博士(理学)
所属学会 日本物理学会、日本天文学会
研究分野 高エネルギー宇宙物理学
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助教:田中周太
学位 博士(理学)
所属学会 日本物理学会、日本天文学会
研究分野 高エネルギー宇宙物理学
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