青山学院大学 理工学部

DEPARTMENT研究室紹介

市原研究室

指導教員 市原直幸 准教授
テーマ 確率論と偏微分方程式の研究
1.マルコフ連鎖とその応用
2.確率最適制御とハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式

研究内容

当研究室では、偶然現象を扱う数学の一分野である確率論に関する研究を行なっています。偶然現象の素朴な例はコイン投げやサイコロ投げですが、自然界や人間社会にはこれら以外にも不確実性を伴う現象が数多く存在します。例えば、生物種の個体数、雑音に汚染された通信、株価の変動、商品の在庫数など、様々な事象を考えることができます。確率論では、これらの偶然現象の本質を抽出して数学モデル(確率モデル)を構成し、元の偶然現象の背後に潜む数学的な構造を解明することを目指します。また、確率モデルから得られた知見を具体的な偶然現象に応用することも、確率論の目的の一つと言えます。

確率論の起源は、17世紀にパスカルとフェルマーの交わした賭けごとに関する往復書簡にまで遡るといわれていますが、厳密な数学理論としての基礎づけは、20世紀前半のコルモゴロフによる公理論(測度論)的確率論により確立しました。その後、確率微分方程式の理論をはじめとする数多くの研究により、確率論は大きく発展しました。現在では、数学理論としてのみならず、物理学や工学あるいは経済学などの様々な分野において、確率論は重要な役割を果たしています。

確率論の面白い点は、「デタラメな現象」が数多く集まれば集まるほど、デタラメであることに起因する「確実な現象」が現れる点にあります。例えば、硬貨投げを何度も行うとき、各回の硬貨投げで表が出るか裏が出るかは全くの偶然ですが、(硬貨に偏りがない限り)表の出る相対頻度は必ず2分の1に近づきます。この現象を確率論では「大数の法則」と呼びます。同種の現象を確率論の立場から数学的に表現したものとして、「中心極限定理」や「大偏差原理」などがあります。

さて、当研究室では、確率論の中でも特に確率過程論の研究を中心に行なっています。確率過程とは、時間とともに変化する偶然現象を数学的に記述したもので、確率論の中心的なテーマの一つです。確率過程の典型例としては、ランダムウォークやブラウン運動などが挙げられます。ランダムウォークとは、数直線上を左右に等確率で1ずつ移動する点の推移を記述した確率過程です。一方、ブラウン運動とは、水面に浮かぶ微粒子の不規則な細動のことを指しますが、20世紀前半にウィーナーにより数学的に厳密な定式化が与えられました。ブラウン運動は株価を記述するモデルに用いられるなど、現在では多くの応用を持つ重要な研究対象の一つとなっています。

現在、当研究室で取り組んでいる研究テーマとして、次のようなものがあります。

マルコフ連鎖とその応用

マルコフ連鎖とは、一定の確率法則(推移確率)に従って決められた状態の間を遷移する粒子の運動を記述する確率過程で、理論と応用の双方において長い歴史があります。なかでも、当研究室では最適化問題と関連の深いマルコフ決定過程に関する研究を行っています。マルコフ決定過程は、ロボット工学、オペレーションズ・リサーチ(OR)、機械学習などの応用分野でも活発に研究されていますが、数学理論としても奥の深い研究対象です。私自身は、数学の立場からマルコフ決定過程に関する理論的な研究を行っています。

確率最適制御とハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式

確率最適制御とは、制御変数を含む確率過程とそれから定まる費用汎関数が与えられたとき、制御をうまく選ぶことにより与えられた費用汎関数を最小化する最適化問題の総称です。工学分野におけるLQG制御や数理ファイナンスにおける最適投資問題などが、確率最適制御の典型例です。
確率制御問題と密接に関連する偏微分方程式として、ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式(以下HJB方程式)と呼ばれる非線形偏微分方程式があります。HJB方程式は非線形偏微分方程式であるため、解の存在や一意性、あるいは解の正則性等の性質を調べることは簡単ではありませんが、数学的な研究対象として非常に興味深い方程式です。当研究室では、「確率制御理論を用いたHJB方程式の研究」と「HJB方程式を用いた確率制御理論の研究」の双方を研究しています。

より詳しい研究内容は、当研究室ホームページにある論文をご参照下さい。

研究室オリジナルサイト

研究者情報

准教授:市原直幸
学位 博士(数理科学)
所属学会 日本数学会,SIAM
研究分野 数学
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