青山学院大学 理工学部

DEPARTMENT研究室紹介

森田研究室

指導教員 森田武史 教授
チャクラボルティ シュデシナ 助教
テーマ 知識工学研究
1.知識グラフ構築支援
2.知識グラフと自然言語処理の応用
3.脳神経科学研究

研究内容

当研究室の主な研究分野は,知識工学(人工知能の一分野),自然言語処理,脳神経科学である.当研究室では,ソフトウェアが利用・共有可能な知識の構築と洗練,異なる知識の統合,推論を用いた知識の導出,知識グラフと自然言語処理を応用した計算機システム,MRI(磁気共鳴画像)を活用して取得した脳神経活動データを用い,脳の仕組みを深く,定量的に理解する研究などを行っている.

人間の知的作業を支援する計算機システムを構築するためには,知識を計算機が処理できるように形式化すること(知識表現)が必要である.知識表現モデルには,知識グラフ(概念や具体物間の関係を記述したグラフ),ワークフロー(業務の処理手順を定義したもの),ルール(規則・条件・判断基準などを記述したもの)などがあり,質問応答,音声対話,意味検索,知識継承,知識マネジメント,ソフトウェア開発,自動運転,エキスパートシステム(専門家の知識に基づいて,推論や問題解決が可能な計算機システム),セマンティックWeb(計算機が自律的にWebページの意味を理解可能なWeb)など,様々な領域に応用されている.しかしながら,知識表現モデルの構築コストが高いことが課題となっており,Webページ,専門文書,大規模言語モデルなどから,自動的に知識表現モデルを構築するための手法が求められている.以上より,当研究室では,知識表現モデルの自動構築や知識表現モデルと自然言語処理を応用した計算機システムの研究開発を行う.また,日常生活で必要とされる複雑で多様な認知機能がどのような神経基盤によって支えられているかを解明するために,MRI(磁気共鳴画像)を活用して取得した脳神経活動データを用い,脳の仕組みを深く,定量的に理解する研究を行う.

知識グラフ構築支援

現状のWebページはHTMLにより,人間向けに記述されているため,ソフトウェアがWebページの内容を直接理解することは困難である.セマンティックWebでは,オントロジー(ソフトウェアが意味理解可能な辞書)を参照しながら,RDF(リソースを記述するためのデータモデルと記述言語)を用いて,Webページのメタデータを記述し,知識グラフを構築することにより,推論技術を用いた情報検索や情報統合などが実現できると期待されている.

知識グラフの構築コストが高いことがセマンティックWeb実現の課題であることから,自然言語文,Webページ,大規模言語モデルなどから,知識グラフの自動構築を行うための手法を研究する.知識グラフ自動構築の基礎研究として,テキスト中のエンティティ名(人や物の名前)を知識グラフ中のリソースに結びつけるタスクであるエンティティリンキングの研究や自動構築された知識グラフには欠落や誤りが含まれるため,知識グラフの補完や訂正をする手法についても研究する.

知識グラフと自然言語処理の応用

知識グラフと自然言語処理に基づく意味処理システムを研究開発する.具体的には,家庭シミュレータVirtualHomeを対象として,日常生活に関する様々な抽象度の説明文からエージェントを動作させるために必要なアクションスクリプト(アクションとその対象オブジェクトから構成)を自動生成する手法や常識・行動・領域知識に基づき家庭内行動を推論する対話エージェントシステムを研究する.また,専門文書を対象とした質問応答システムにおいて,システムが判断に至った理由とその根拠を,文献を引用しながら説明可能なシステム,大規模言語モデルに基づいて判決・裁決文を要約する手法,人の発話の意味を考えて議論可能な議論システムなどを研究する.

脳神経科学研究

日常生活で必要とされる複雑で多様な認知機能は,どのような神経基盤によって支えられているのでしょうか.この問いに答えるため,MRI(磁気共鳴画像)を活用して取得した脳神経活動データを用い,脳の仕組みを深く,定量的に理解することを目指している.

1.構造・機能理解
MRIにはさまざまな種類(撮影手法)があり,各手法を組み合わせることで脳の特性を多角的に解析できる.例えば,脳内の異なる領域間のつながり(接続性)を構造的データで調べる一方で,機能的MRI(fMRI)を活用して,知覚や認知,言語理解が脳内でどのように処理されているのかを研究する.さらに,これらのデータを統合的に解析することで,脳の構造と機能の相互関係をより深く理解することを目指している.このアプローチにより,構造的な接続パターンが脳の機能的活動にどのように影響を与えるのかを解明するだけでなく,脳内ネットワークが情報処理を行う仕組みを包括的に捉えることが可能になる.

2.老化や病気による変化
老化や疾患に伴い,脳はどのように変化するのか.この問いに対して,健康的な老化と疾患に関連する老化との違いに焦点を当て、脳ネットワークが加齢に伴いどのように変化するかを解析している.この研究では,老化が認知機能や神経接続性に与える影響を解析することで,認知症をはじめとする老化関連疾患の予防や早期診断のための新たな知見の提供を目指している.

3.ツール開発
近年,脳画像解析に関連するさまざまなPythonパッケージが開発されており,それらを活用した効率的な解析が可能になっている.しかし,高次元かつ複雑で膨大な脳神経活動データを扱うには,さらに使いやすく直感的なツールが求められる.そのため,視覚的にわかりやすいユーザーインターフェース(UI)を備えた解析ツールの設計に注力している.特に,生体データ解析においてはデータの品質管理(Quality Control)が不可欠である.データの処理や解析を効率化し,プログラミングの知識がなくても利用しやすい環境を提供することを目指している.

参考文献

研究室オリジナルサイト

研究者情報

教授:森田武史
学位 博士(工学)
所属学会 人工知能学会、情報システム学会、日本データベース学会、電子情報通信学会,情報処理学会,言語処理学会,ACM
研究分野 人工知能、知識工学、オントロジー、セマンティックWeb、知能ソフトウェア工学
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助教:チャクラボルティ シュデシナ
学位 Ph.D. (Neuroscience)
所属学会 Organization for Human Brain Mapping(OHBM)
研究分野 脳神経科学、ニューロイメージング、認知症
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