青山学院大学 理工学部

DEPARTMENT研究室紹介

脳科学研究室

指導教員 平田普三 教授
和田清二 助教
テーマ
1. 運動遺伝学
2. 老化
3. 動物の心変わり
4. 感覚生理学
5. 医薬品・化粧品・環境物質等の安全性試験

研究内容

運動神経のいい人を見て、うらやましく思ったことがあるでしょう。運動能力のよしあしを決めるのは家系(=遺伝子)でしょうか、トレーニング(=環境)でしょうか。私たちは経験則から、スポーツマン家系には身体能力の高い人が多く、また誰でもトレーニング次第で運動が上達することを知っています。つまり遺伝子と環境の両方が運動能力に寄与するようです。では、運動能力を規定する遺伝的要因(遺伝子)と環境要因(トレーニングによる変化)の実体は何でしょうか。私たちはゼブラフィッシュという熱帯魚を使い、脳神経系と筋から成る運動システムの形成と発達、加齢による衰退の分子メカニズム、動物の気持ちの変化による行動変化の分子機序、光の認識による行動制御を研究しています。また、医薬品・化粧品・環境物質等の安全性試験の確立を目指しています。

運動遺伝学

ゼブラフィッシュをモデルとして、脳神経系と筋から成る運動システムの形成や発達に必要な遺伝子を特定し、その機能とそれが破綻した時にあらわれる運動異常を解明しています。ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を駆使した基礎研究から、これまでに脊髄性筋萎縮症、筋無力症、乳児てんかんなど、運動障害を伴うさまざまなヒトの難病の原因遺伝子を同定してきました。運動原理を理解し、その先に難病の治療や創薬を捉え、運動の基礎研究を進めていきます。

老化

日本は2013年に65歳以上の高齢者が総人口の25%を超える超高齢化社会に突入し、2050年代にはそれが40%に迫ると推計されています。加齢にともなうヒトの運動機能低下は、ロコモやフレイルともよばれますが、実際に運動システムで何が起きているのか、なぜ老化が起こるのかは未だに謎に包まれています。私たちはゼブラフィッシュで老化モデルを作出し、加齢にともなう運動機能低下の分子メカニズムを解明して、その対策を提唱することで、日本の抱える超高齢化問題に挑戦します。また、高齢者が増加する中で持続可能な社会を創造する学問「ジェロントロジー」を推し進めています。

動物の心変わり

気持ちを変えて行動を変える時、脳で何が起きているのでしょうか。グリシンというアミノ酸を用いた神経細胞間の情報伝達(グリシン作動性シナプス伝達)は運動や行動の制御に重要な役割を果たします。私たちは動物がグリシン作動性シナプスを短時間で変化させる(可塑性がある)ことを見出し、その動作原理の解析から、動物が気持ちを変えて行動を変える分子メカニズムを解明しました。また、GABAというアミノ酸を用いた神経細胞間の情報伝達(GABA作動性シナプス)にも注目し、動物の心変わりの統合理解を目指しています。

感覚生理学

多くの動物は光を感じ、光の変化によって行動を変化させます。例えば明るい環境で水面付近を泳ぐゼブラフィッシュの仔魚は、光が消えたことがわかると、すぐさま水面から離れ底の方へと移動します。このような行動の変化は、明から暗の変化つまり光の強度変化のみで生じるのではなく、光の「色」の変化によっても生じます。したがって、青、緑、赤、などのさまざまな色の光を吸収する複数の受容体が関与し、動物の行動を制御していると考えられます。私たちは40種類以上の光受容体をもつゼブラフィッシュを用いて、どのような色の組み合わせがどのような行動に重要なのかを検証し、色が見えるとはどういうことかの理解を目指します。

医薬品・化粧品・環境物質等の安全性試験

医薬品等に含まれる化学物質は生体に何らかの作用を及ぼすものですが、その安全性は事前に確認されていなければなりません。欧州連合(EU)を中心に動物愛護に配慮した安全性試験を構築する動きが進んでおり、それに適合した医薬品・化粧品・環境物質等の安全性試験法の開発を進めています。

参考文献

研究者情報

教授:平田普三
学位 博士(理学)
所属学会 日本神経科学学会,日本生化学会,日本発生生物学会,日本動物学会,日本比較生理生化学会,日本分子生物学会,日本てんかん学会,Society for Neuroscience,International Zebrafish Society
研究分野 脳科学,遺伝学,発生,老化,疾患,毒性試験
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助教:和田 清二
学位 博士(理学)
所属学会 日本動物学会,日本比較生理生化学会
研究分野 動物生理学,神経行動学,光生物学
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