青山学院大学 理工学部

DEPARTMENT研究室紹介

材料強度学研究室

指導教員 蓮沼将太 准教授
早瀬知行 助教
テーマ 1.疲労破壊およびき裂進展に関する研究
2.インデンテーション試験を用いた局所力学特性評価に関する研究
3.マルチスケール実験およびシミュレーションに関する研究

研究内容

本研究室では、材料の強度や破壊に関する研究を行います。産業界で実際に使用されている機械において、材料の破壊は事故と直結し、大きな被害を生じさせます。このような破壊事故を防ぐためには、材料強度の研究が不可欠です。また、燃費向上、生産コスト低減、安全性向上など機械の性能を向上させるためには、新規材料を開発することおよびその材料の破壊メカニズムを解明することが必要です。本研究室では、材料の強度試験を行い、材料の特性を評価するとともに、なぜ壊れたのか?なぜ強度が向上したのか?などを調べます。

疲労破壊およびき裂進展に関する研究

一回の負荷では破壊が生じないような荷重でも、それを何回も繰り返していると破壊が生じます。これを疲労破壊といいます。実際の構造物での疲労破壊は大きな事故を引き起こすことから、疲労破壊を防ぐことは安全のために重要です。疲労破壊はき裂の発生および進展によって生じます(図1)。本研究室では、航空機や燃料電池自動車、バイク、発電プラントなどで用いられている材料の疲労破壊およびき裂進展の研究を行うことで、社会の安全に貢献します。

特に、超音波疲労試験を用いた疲労強度評価に力を入れています。超音波疲労試験とは、試験片を超音波と共振させることにより20 kHzという高速度で疲労試験を行う方法です。これにより、従来では数カ月かかっていた実験を数日で行うことが可能となります。これを用いて、超高サイクル疲労寿命や極低速き裂進展を評価します。

また、近年では、実験を行わなくても疲労寿命を予測できるように、シミュレーション技術の開発も行っています。

インデンテーション試験を用いた局所力学特性評価に関する研究

配管などの溶接部の力学特性や電子部品に用いられている薄膜の力学特性を把握することは、製品の安全のために重要です。しかし、溶接部や薄膜の引張試験を行うことは困難です。本研究室では、硬さ試験やインデンテーション試験を用いた局所力学特性評価法を検討しています。特に、複数圧子法という手法を用いて局所的な応力ひずみ関係の推定手法を提案しています。それにより、引張試験を行うことができない溶接部や薄膜の応力ひずみ関係を推定します。また、従来よりもさらに薄い膜や層の力学特性を評価するために、X線回折法を用いた評価法も検討しています。

マルチスケール実験およびシミュレーションに関する研究

材料に負荷をかけると、肉眼では大きな変化が生じていなくても、ナノ・マイクロスケールでは様々な変化が生じます。そのようなナノ・マイクロスケールで発生する現象によって、材料の破壊は引き起こされます。しかし、ナノ・マイクロスケールの現象を観察するのは簡単ではありません。そこで、ナノ・マイクロスケールの現象を明らかにするための実験およびシミュレーション方法を開発しています(図2)。

例えば、顕微鏡下での材料試験によりマイクロスケールの現象および変形挙動を観察したり、透過型電子顕微鏡を用いてナノスケールでの組織を観察したりします。シミュレーションを用いた研究としては、原子1つ1つの運動をコンピュータ上で再現する「分子動力学法」、転位の運動をシミュレーションする「転位動力学法」、結晶方位による変形異方性を考慮できる「結晶塑性有限要素法」の研究を行っています。以上のようなナノ・マイクロスケールの実験およびシミュレーションを用いて破壊メカニズムの解明に挑みます。

左:疲労き裂の発生と進展の様子(図1)、右:マルチスケール実験およびシミュレーションのイメージ(図2)

研究者情報

准教授:蓮沼将太
学位 博士(工学)
所属学会 日本機械学会、日本材料学会、日本実験力学会
研究分野 材料強度学、材料力学、実験力学、計算力学
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助教:早瀬知行
学位 博士(工学)
所属学会 日本材料学会、日本機械学会、日本溶射学会
研究分野 材料力学、高温強度学、材料強度学
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