青山学院大学 理工学部

DEPARTMENT川﨑盛通 助教

川﨑盛通 助教

教員 川﨑盛通 助教
テーマ シンプレクティック幾何学とハミルトン微分同相群の幾何学・群論

研究内容

シンプレクティック多様体上のハミルトン力学系、およびその対応する変換群であるハミルトン微分同相群に興味があります。

ハミルトン微分同相群は無限次元のリー群となっており、このような対象を「完全」に近い形で理解することは不可能なので、何らかの視点を固定して研究することが重要となります。そこで私が注目しているのが「擬準同型(とその一般化である部分擬準同型)」と「共役不変ノルム」となります。

「共役不変ノルム」というのは群上の性質の良い距離構造なのですが、力学系理論においては「写像を繰り返し合成した際にどれだけ恒等写像から離れてゆくか」が一つの重要な問題意識で、この「どれだけ離れてゆくか」を測定するために変換群に距離構造を入れるというアイディアがあります。ハミルトン微分同相群の場合にはホーファー・ノルムや交換子長、自励長といった様々な共役不変ノルムがあり、これらが写像の繰り返し合成に対してどのように振舞うかを研究しています。

「擬準同型」は群上の実数値函数で性質の良いもので、歴史的には円周の力学系を研究する文脈でポアンカレの導入した回転数に起源があり、昨今では双曲幾何との関連でよく研究されています。擬準同型と上記の交換子長の間にはBavard双対定理という一般的な関係があるのですが、ハミルトン微分同相群上の擬準同型の構成法を工夫することで、他の共役不変ノルムの下からの評価を得ることができます。「部分擬準同型」はその一般化に該当する概念で、2006年出版の論文で導入されたのですが、当初はフレアー理論を用いた構成のみが知られており、応用もシンプレクティック幾何に限られたものでした。私は他の部分擬準同型の構成法を提案してBurago-Ivanov-Polterovichの未解決問題を解決したり、部分擬準同型版のBavard双対定理を証明するなどしてきました。最近では擬準同型の拡張問題を他分野の研究者と共同で研究しています。

ハミルトン微分同相群を研究することによる応用ですが、私が研究している事象としてはシンプレクティック多様体の部分集合のnon-displaceabilityがあります。

シンプレクティック多様体の部分集合Xついて、あるハミルトン微分同相写像(ハミルトン微分同相群の元)ψが存在してψがXを自身と交わらないように動かす、つまりψ(X) ∩X=φとなるとき、Xはdisplaceableであるといい、そうでないとき、Xはnon-displaceableであるといいます。

このnon-displaceabilityという性質はミラー対称性などの数理物理の文脈でも研究されている興味深い現象です。私はカラビ部分擬準同型というハミルトン微分同相群上の部分擬準同型を用いて、この問題にアプローチしてきました。

比較的最近の業績だと、特殊直交群SO(3)上の可積分系であるコワレフスカヤのコマについてnon-displaceabilityな特異ファイバーを発見したことがあります。最近は球面直積上の可積分系でnon-displaceableな特異ファイバーを研究しようと考えています。

カラビ部分擬準同型を構成するにはフレアー理論というものを用いますが、それ自体の研究もいくつか行っております。

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研究者情報

助教:川﨑盛通
学位 博士(数理科学)
所属学会 日本数学会
研究分野 シンプレクティック幾何学
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