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「東北」から感じること、未来への想い

2011年3月11日に起きた東日本大震災では、東北地方を中心に大きな被害を受けました。地震は大津波と原子力発電所の事故まで引き起こし、今もなお復興に向け懸命な作業が行われています。
私たちの理工学部がある相模原キャンパスのチャペルでも、毎月11日は特別な礼拝で祈りを捧げています。本学理工学部には、東北の被災地に赴き、ボランティア活動を通じ、現地の状況を経験した学生が複数います。今回は彼らの現地での活動の様子や、実際に肌で感じた被災地の現状を座談会形式で報告してもらう機会が実現しました。その様子をお伝えします。

集合写真 座談会参加者Profile:
■山田 智咲
 理工学部 化学・生命科学科4年
 私立桜美林高等学校
■浮島 祐太
 理工学部 化学・生命科学科3年
 私立芝浦工業大学柏高等学校卒業
■鈴木 隆之佑
 理工学部 物理・数理学科1年
 東京都立町田高等学校卒業


司会:今日は、青山学院大学理工学部に在籍している学生3名に、座談会に出席してもらっています。それぞれが普段大学でどういった環境で生活しているかということも含めて自己紹介をお願いします。

浮島:文系と理系が一緒に学べる整った環境で勉強ができることに満足しています。講義だけでなく、課外時間でも様々な形で、学部を越えた友達を作る場があり、友人を通じても幅広い知識を身につけることができる環境にいると思っています。

山田さん

山田:相模原キャンパスは緑も多くて美しくきれいなところです。私は、実験系の研究室に所属して卒業研究に取り組んでいますが、とても恵まれた研究環境で実験をしていると実感しています。活発な研究室が多く、学会や研究会を通じて、いろいろな方たちとつながりを持てることも魅力だと思います。

鈴木:私は、2012年4月に入学しました。勉強の傍ら、理工茶道部に所属しています。ともかく、キャンパスの環境のよさと、普段の講義以外に参加できる活動が充実していることに驚いています。


司会:鈴木さんと浮島さんは、課外活動のひとつとして大学が企画した、被災地へのボランティア活動がきっかけで現地に赴いたのですね。

鈴木:私は、東日本大地震の瞬間は高校生で、友人と校庭に避難している間に、携帯電話のテレビから津波警報やコンビナートの爆発の様子を見ていました。その目を疑うような情報を目の当たりにして、絶対に東北に応援に行こうと誓いました。
私は講義の都合で、ゴールデンウイークには行くことができませんでしたが、2012年の夏休みに現地に行きました。やっと被災地に応援に行くことができた、と心から身が引き締まる思いでした。訪れたのは、石巻市日和山です。

浮島さん

浮島:私も石巻市の寿商店街や陸前高田市のボランティアステーション、そして障害者の方たちのいる施設でボランティア活動をしました。ボランティアステーションでは、津波で流された写真を一枚一枚、丁寧に洗ってスキャンしたものをトリミングし、データベース化する作業の手伝いをしました。建物の2階で作業をしていて、1階には皆さんが写真を探しに来ていました。

司会:の活動は、現地から戻ってからも作業を続けたようですね。

浮島:はい、そうなんです。授業などで現地に行かれない時でも、現地から送られてきた写真の洗浄作業は、こちらでもできました。現地に行かなくても、このような形で携わることのできるボランティア活動があることを知りました。

山田:いろいろな活動があるのですね。私も石巻の商店街は行きましたよ。元気をいただいた風景です。私の場合は、ローターアクト*での活動として、仲間たちと共に2012年2月と2012年11月に、東北にボランティア活動に行きました。石巻市と南三陸町です。特に、11月は2月の活動をきっかけとして現地の方から直接声をかけていただき、食興祭というお祭りの手伝いに行きました。

司会:食興祭とは初めて聞く言葉です。

山田:そうですね。食することから元気になろうということから2011年の夏に始められたお祭りだそうです。

司会:なるほど、そうですか。


鈴木さん

鈴木:私は、現地の人の話を聞くこと自体を目的とした、いわゆるスタディツアーのボランティア活動をしてきました。15人くらいのグループがひとつの単位として、現地での様子をインタビューしていき、そのあとグループでディスカッションしていくという活動です。衝撃的な話を冷静に捉えて、まとめ、そして伝えていく必要があると思っているのですが、現地の方の気持ちを思うと胸がつまりうまくまとめられないでいるような状況です。今日は、座談会で先輩たちと何か想いを共有できそうなので、これからなんとかまとめられるように頑張りたいと思ってきました。

司会:そうですか。今日がひとつのいいきっかけになると私たちも信じています。

鈴木:実際に地震の時、大津波の後の話を聞くと怖かった。現地の皆さんは、恐怖や絶望感が渦巻く中、それでもお互いを支えなくてはいけないという思いや、優しさに触れたあたたかい話もしてくださいましたが、すべての話が私の心には突き刺さるように感じました。こんなにも緊張しながらの対話は、きっとこれからも経験することはないだろうと思うほどでした。

山田:私も現地の方たちとお話をする機会がありました。家族が津波に流された話を聞いた時などは、どう答えたらよいかわかりませんでした。相槌をうつことが精いっぱいでした。

鈴木:私は、話を聞いている間、この町の将来をとても心配に思いました。でも、現地の方たちは、元気に話してくれましたし、特に子供たちが元気いっぱいではしゃいでいる様子を見ていると、こちらも元気をもらい、大丈夫に違いないと確信しました。

山田:そうですよね。本当に現地の方は、明るく接してくださって、本当に心の強さを教えていただきました。

浮島:生活している風景も大津波によって全く変ってしまっています。でも、着実にいい方に変っていることも感じます。2011年に石巻に行ったときには、漁港に缶詰会社の大きな缶詰のオブジェがありました。とても大きい金属製のオブジェがへこんでいて衝撃的な風景でしたが、今は撤去されたと聞いています。


司会:山田さんたちは、親と子が個々に楽しむことのできる企画に携わったのですね。

山田:はい。2月の活動に凧揚げとティーパーティをおこないました。その前に現地のニーズを相談に行ったときに、子供たちは遊ぶ場所も十分ではないため、いつも家族がつきっきりでいる現状を知りました。また、他のボランティア団体の企画した催しは、現地の方が準備や片付けをすることになっていると聞きました。その中で私たちができることを考え、自分たちで場所の手配から片づけまでを行い、内容は子どもたちとは凧作りで遊んで、その間、家族の方は大人だけのティーパーティに参加してもらうことで、それぞれが子供の時間、大人の時間を楽しんでもらえるようにしました。
また、私は、3名の仲間と昼食のあら汁100食分を作りました。慣れない手つきであたふたしていたら、現地の方がみかねて手伝いにきてくださって、それで予想外にお話を伺うこともできてよい経験になりました。

勉強風景

浮島:私は、写真のデジタル化の作業のほかに、教育関係や、障害をもつ方たちの施設でのボランティア活動にもいきました。小学生とは一緒に勉強をして、後はめいっぱい遊んで自分自身も大変楽しかったです。帰るときには名残惜しくて、寂しかった。理系の学生のボランティアが私くらいしかいなかったので、算数や数学の宿題のお手伝い担当でした。それもあって、数学が好きな子とは、毎日遊んでいました。
障害をもつ方の施設では、皆さんに話しかけることが私の担当でした。初めの頃は、私が声をかけてもなかなか話を返してくれなかったのですが、徐々にお互いに慣れて、ある日突然、声をかけてくれるまでになりました。初めてのことだったので、施設の職員の方たちといろいろと相談しながら、個性を重視して取り組むようにしました。ひとと向かい合うことを改めて考えることのできた、とても大切な経験でした。


司会:皆さん、被災地の応援に行くことで、ひとに支えられるということを実感してきたことが伝わってきます。

山田:被災地のボランティア活動では、一瞬で津波などですべてが無くなってしまったという状況で、様々な環境で生活している方と直接お話しすることで、今自分が勉強に集中できる環境がありがたいと心から思いました。日々時間を大切に有意義に過ごし、自分にできることは最大限にチャレンジしたいと思います。現地の人のパワーがすごくて、前向きで、逆境をばねにして未来に対して強い希望を持っていることに感銘を受け、私も必死に生きようと思いました。

鈴木:私もテレビなどで見ていた風景と同じところに実際に足を運んだことで、その風景に衝撃を受けました。絶望の中にいても、頑張ろう、と立ち上がり進んでいく方たちと話をすることができ、お互いを思いやり、地域を活性化して励ましていく姿勢が、目標や希望を捨てるという選択肢と無縁であることに心の強さを感じました。

港風景

山田:港に近い方たちは海の風景を大切にしています。たとえば、堤防ができる場所では、堤防で海も見えなくなってしまうので、堤防と同じ高さまで土を埋めて町全体を高い位置につくろうとしています。そのことを話してくださるとき、皆さんの目が輝いていました。


浮島:現地では放射能のことも話題に上がりました。私は化学を専攻しているので、将来に向けていろいろな形で社会に還元していかれるように大学で知識や経験を培いたいと一層強く思いました。

山田:私は一連のボランティア活動で出会った方たちから、ひとつのことでも、いろいろな人に影響を与えることを実感しました。大津波が私たちの生活に与える影響や、そこから町をつくっていくことなど、それぞれにいろいろな課題が絡んでいることもわかりました。ひとつの問題であっても多面的に考えながら行動するべきであることを実感しました。

浮島:私は、自分の中で現地との関わりを今後もずっと保っていきたい。今回の震災については、恐怖であったり、絶望感も伝えなくてはいけないという使命も感じましたが、この点は自分自身では限界もあります。でも、現地との関わりをやめないで続けていくことは自分でもできることだと思っています。

司会:今日は貴重なお話をありがとうございました。皆さんの活躍をこれからも期待しています。


日吉委員長と共に3名の話を聞いてきました。共通して感じたのは、被災した現地の深刻な現実を継続して認識していくことの大切さです。彼らの言葉によって、息をのむほどのパリッとした雰囲気になりました。広い意味で人を愛する若者がいることに、安堵も感じました。東北地方に就職した卒業生も多くいます。化学科出身のOBが声掛けし、1トンの米を集め、大学時代の友人が住むいわき市に送ったとの情報も私たちのところに届いています。ひととひとのつながりが、お互いに大きな支えになっていることに、大学で教育する意味を再認識させられる時間となりました。

[注釈]
* ローターアクトは、18歳から30歳までの青年男女のための、ロータリーが提唱する奉仕クラブ。ローターアクト・クラブは通常、地域社会または大学を基盤としており、地域社会のニーズに取り組みながら、友情と奉仕を通じて国際理解と平和を推進している


2012年12月19日実施
インタビュー記事
責:理工学部広報委員会

青山学院大学 山田 智咲・浮島 祐太
所属 化学・生命科学科
青山学院大学 鈴木 隆之佑
所属 物理・数理学科

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