教員リレーコラム~知の並木道~

リレーコラム第24回(2013年7月16日)
鉛筆の芯から新材料 グラフェン

文:理工学部 電気電子工学科 准教授 黄晋二

黄晋二 准教授
 黄晋二 准教授

みなさんが日頃使っている鉛筆の芯が未来のエレクトロニクス技術を担う、と聞いたら驚くかもしれません。しかし、これはあながちウソではありません。鉛筆の芯は、六角形格子状に炭素原子が結びついたシートが積み重なった黒鉛(グラファイト)でできており、1層または数層の炭素シートをグラフェンと呼びます。2004年に英国マンチェスター大学のガイム博士とノボセロフ博士らが、グラファイトからグラフェンを単離することに成功して以来、世界中で爆発的に注目を浴びるようになりました(二人は、2010年ノーベル物理学賞を受賞しています)。

グラフェンが注目を浴びているのは、その非常に優れた電気伝導特性が主な理由です。グラフェンのトランジスタが実現すれば、現在のシリコントランジスタを使ったコンピューターよりも100倍以上速いコンピューターを実現できる可能性があります。また、極めて強い材料であることも分かっていて、例えば、炭素原子1層のグラフェンシートで作ったハンモックは象が乗っても破れない、と言われています(誰も実際に確かめたことはありませんが)。

グラフェンを作るのは実に簡単です。セロハンテープにグラファイトを一片のせ、貼っては剥がしを繰り返し、グラファイトをテープ上で薄くしていきます。これを基板に押し付けて転写すると、(あなたの運が良ければ)基板のどこかにグラフェンを見つけることができます。ずいぶんと原始的な作り方だ、と驚くかもしれませんが、実際、この手法で形成したグラフェンを用いて重要な基礎研究が行われてきています。しかし、このテープ法を使っている限りグラフェンの実用化は不可能です。このため、メタンなどのガス原料を用いたグラフェンシート作製技術に関する研究が進められていますが、現段階では、テープ法で作ったグラフェンの方が良い特性を持っています。実用化には、高品質かつ大きな面積のグラフェンを結晶成長する技術が必ず必要となります。

グラフェンは、わずか原子1層の「表面のみで構成されている材料」です。なので、もし表面に何らかの物質が付着すると、敏感にその電気伝導特性が変わります。我々は、この特性変化を上手に利用することで、高感度のセンサー素子を作製できると考えています。今後、グラフェンの結晶成長とセンサー素子について研究を進め、グラフェンが持つ様々な可能性を最大限に引き出していきたいと思っています。

図1 グラフェンの構造:六角形格子状の炭素原子シート 図2 (上)テープ法の手順(下)テープ法で作ったグラフェンの光学顕微鏡像

次回のコラムは、電気電子工学科 渕 真悟 准教授が「見えない光でモノを観る」についてのお話しをリレーしてくださいます。ご期待ください。

電気電子工学科
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青山学院大学 理工学部 電気電子工学科 准教授
黄 晋二
Shinji Koh
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