教員リレーコラム~知の並木道~

リレーコラム第23回(2013年7月1日)
睡眠を計る

文:理工学部 経営システム工学科 准教授 栗原陽介

栗原陽介 准教授
 栗原陽介 准教授

このコラムを読まれている中高生の皆さんは、きちんと質の高い睡眠をとっているでしょうか?
もしかすると、深夜まで勉学に勤しんで3,4時間しか寝ていない人も多いかもしれません。または、深夜番組、インターネット、メール、LINE等で、毎晩、睡眠時間を削っている人も多いかもしれません。睡眠は、我々人間にとって必要不可欠なものです。質の高い睡眠は、脳と体の疲労回復や免疫機能の向上につながり、健康的な生活を送るための重要な要素です。しかし、夜更かしなどの不規則な生活や、日々のストレスに伴い、睡眠の質が低下してしまいます。日々の睡眠の状態をモニタリングし、自分の睡眠状態を客観的に把握できれば、それに合わせて生活習慣を見直し、改善することが可能です。

睡眠の質は、国際標準であるR-K法により評価されます。R-K法では、1晩の睡眠時間を30秒~1分毎に区切り、睡眠中に計測した脳波、眼球運動、あご筋電(咀嚼する筋肉を動かすときの電圧)をもとに、それぞれの時間を覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠1、2、3、4の6段階の睡眠段階に分類します。特にノンレム睡眠3、4は良質な睡眠であり、この睡眠段階時に成長ホルモンが放出され、筋肉や骨の成長、維持、胃腸や肌の修復、さらには疲労の回復が行われます。しかし、これらの計測には、図1に示すように電極を顔中に貼る必要があり煩わしいため、日々計測するのは困難です。また、大規模で高価な機器を使用するため、自宅ではなく医療機関や専門施設など、日常とは違った環境で睡眠をとる必要があり、所望の日常的な睡眠状態を正しく評価できない懸念もあります。もし、自宅でセンサを体に設置することなく睡眠段階を推定することができれば、日々の睡眠の質を正しく評価することができ、健康管理の一助となります。

図1 脳波計と睡眠段階

私の研究室では、システム工学において重要なセンシング技術を活用し、幅広い分野で役に立つシステムの構築を行っています。その中の1つとして、医療情報/介護支援に関するシステムを研究開発しています。このシステムでは、図2に示すように、体にはセンサを何も設置せずベッドに横になるだけで心拍、呼吸、いびき、咳、寝返りなどの生体情報を計測することができます。さらに、計測した心拍信号を詳細に分析することで、R-K法と同じように睡眠段階を推定することができます。体にはセンサを何も設置しないため、負荷を最小限に抑えることができ、日々の睡眠段階の推移を把握し評価することが容易にできます。

理想的な睡眠段階の推移は、ベッドへ入床してから、深い睡眠段階(ノンレム睡眠3、4)が現れるまでの時間が短く、さらに明け方に向かって浅い睡眠と深い睡眠を約90分周期で繰り返し、徐々に浅い睡眠段階(ノンレム睡眠1、覚醒)へ遷移する睡眠です。健康な人では、この理想的な睡眠の特徴が表れます。しかしながら、不健康な生活をおくっていると、深い睡眠が出現せずに途中覚醒を繰り返しながら起床をむかえるため、たとえ長時間睡眠をとったとしても、疲労が蓄積されたまま起床することになります。このような状態では、授業中眠くて、授業内容に集中できないことでしょう。

図2 無拘束型の生体情報センシングシステム

現在、我々の方法のように、生体情報を計測する際に極力センサの拘束性を低くする方法が提案されており、インターネット、携帯電話などのインフラの整備も手伝い健康管理が身近なものになってきています。皆さんも自分自身の睡眠段階を把握し、生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

次回のコラムは、電気電子工学科 黄 晋二准教授が「鉛筆の芯から新材料 グラフェン」についてのお話しをリレーしてくださいます。ご期待ください。

経営システム工学科
http://www.agnes.aoyama.ac.jp/ise/index.html


青山学院大学 理工学部 経営システム工学科 准教授
栗原陽介
Tomoko Kajiyama
▲TOPへ戻る▲

copyright(c)2003-2014 Aoyama Gakuin University College of Science and Engineering All Rights Reserved.