教員リレーコラム~知の並木道~

リレーコラム第20回(2013年1月21日)
冷たい熱をはこぶ

文:理工学部 機械創造工学科 准教授 熊野寛之

熊野寛之 准教授
熊野寛之 准教授

暑い夏の日、エアコン(冷房)の効いた涼しい部屋で過ごしている方がほとんどでしょう。今や、冷房のない暮らしなど想像もつきません。

ところで、皆さんはこの冷房の仕組みをご存じでしょうか?簡単に言うと、圧力を下げて冷やした流体(冷媒)が室内機で部屋の空気と熱交換して空気を冷やし、空気を冷やすことで熱をもらった冷媒は、圧力を上げて温度の高くなった状態で室外機に送られ外気に熱を放出しています。これを繰り返すことで室内の熱を外気中に放出して、室内を冷やしています。冷蔵庫も同じ仕組みです。

この時、冷媒はたくさんの熱量をはこぶために、相変化を利用しています。つまり、冷やされた液体が室内機で空気の熱をもらって蒸発して気体となり、逆に室外機では蒸発した気体が熱を放出することにより凝縮して液体に戻ります。この冷媒の代表格がフルオロカーボン(フロン)ですが、1970年代にフロンのオゾン層破壊が問題となり、現在はその使用が禁止されています。

現在は、その代わりになるもの(代替フロン)が使用されていますが、これらも強力な温室効果ガスであり温暖化に悪影響を及ぼすために、できる限りその使用量を減らす試みがなされています。その一つが、冷やされた冷媒と室内機の間に別の物質(二次冷媒)を循環させて熱をはこび、代替フロンの使用量を削減しようというものです。特に、ビルなどの大規模な建物の冷房を考えると、大幅に代替フロンの使用量を減らすことが可能となります。

この二次冷媒として期待されているものの一つが、アイススラリーです。アイススラリーとは、水溶液の中に小さな氷粒子が浮かんでいる液体状のもので、写真のように流動性を持っています。アイススラリーの顕微鏡写真から、直径が0.1mm程度の氷粒子が含まれていることがわかります。このアイススラリーを利用することの利点として、氷粒子を含んでいるので、通常の水より多くの冷たい熱をはこぶことが可能となります。そのため、少ない量で多くの空気を冷やすことができ、アイススラリーを輸送するためのパイプ直径を小さくすることが可能となり、設備のための費用も軽減できることとなります。

しかし、このアイススラリーをパイプの中に流したり、空気と熱交換させるためには、どのようにパイプの中を流れていくのか、流すためにはどれぐらいの力が必要か、氷がどのように溶けていくのかなど、空調設備の設計のために、アイススラリーの様々な特性を把握することが必要となります。

自然環境への影響に配慮しながら我々にとっての快適な生活環境を作っていく、そんなことを意識しながら、私たちの研究室では日夜、この冷たいアイススラリーと熱く格闘しています。

img01アイススラリー

img02アイススラリーの顕微鏡写真

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青山学院大学 理工学部 機械創造工学科 准教授
熊野 寛之
Hiroyuki Kumano
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