教員リレーコラム~知の並木道~

リレーコラム第17回(2012年10月22日)
非線形は面白い

文:理工学部 物理・数理学科 教授 竹内康博

竹内康博 教授
竹内康博 教授

皆さんは数学にどんな印象をもっていますか?計算が面倒だ、公式を覚えるのに苦労する、役に立つの?などなど。今回は四則演算だけで簡単に計算できる(携帯の電卓があればすぐに結果の出る)面白い式を紹介しましょう。

生物の個体数の時間変動を考えます。今年の個体数をa0n年後の個体数をanと書くことにして、個体数が毎年gamma倍になるなら、01と表され{an}は公比gammaの等比数列となります。k年後の個体数はrkanですから、02なら個体数は将来限りなく大きくなります。

現実の世界では、個体数が大きくなりすぎると利用できる資源が不足するので個体数は減少します(密度効果と呼ばれます)。減少の程度がra2nで表されるとすると、03となります。等比数列より少し複雑ですが、今年の個体数a0が与えられればa1 , a2...を次々に計算することができます。さて、この数列でnを大きくしていったとき、anはどのような値となるでしょうか?

04なら等比数列と同様にanは0に近づきます。02のとき、等比数列では限りなく大きくなりましたが、いまの場合は事情が異なります。
まず、05ならば an06に近づきます。07ならば、anは2つの値を繰り返しとるような振動(周期2の周期解)に近づきます(図1)。これは、増えすぎた個体数が密度効果で翌年には減少し、その結果環境が改善され翌々年には個体数が増加するという現象を表しています。 gamma08を超えると今度は4つの値を繰り返しとるような振動(周期4の周期解)に近づきます(図2)。さらにgammaを大きくしていくと、周期8、16、32....の振動が次々に現れます。

img01

img02

周期2の周期解が現れるgammaの区間の長さは09でした。周期4 の区間の長さr2、周期8の区間の長さr3...を次々に求めると、数列{rn}は公比4.669201....分の1の等比数列となります。0 に近づく等比数列は無限個足しても有限の値になります(高校でも習いますね)。区間の長さをすべて足すと、0.5699...という値になります。

さて、gammaが3 + 0.5699...を超えると非常に奇妙なことが起こります。anは出発点の値a0に応じて様々な振る舞いをするようになるのです。先ほど述べた2n周期以外の周期解(奇数周期の周期解など)に近づいたり、一定値にも周期解にも近づかないカオス振動が現れたりします。図3は10とし、出発点a0を0.00001だけ変えたものですが、11以降はまったく異なる振動が現れています。

img3-1

img3-2

図4は横軸にgamma、縦軸にnが十分大きくなったときのanを描いたもので分岐図と呼ばれます。これまで説明してきたことが、この図から読み取れますでしょうか?

このような複雑な解は等比数列では得られず、密度効果のような「非線形性」と呼ばれる効果が必要です。ra2nという簡単な非線形性でカオスという複雑な現象が得られることが1970年代前半にRobert Mayによって示され、カオスが多くの研究者を惹きつけることになりました。表計算ソフトのエクセルを使えば簡単にグラフも表示できるので、皆さんもチャレンジしてはどうですか?

img4

次回のコラムは、化学・生命科学科 阿部文快准教授 が「極限環境にすむ生物の不思議」についてのお話しをリレーしてくださいます。ご期待ください。

竹内康博教授の研究者情報
http://www.agnes.aoyama.ac.jp/phys/faculty/takeuchi.html

物理・数理学科のホームページ
http://www.agnes.aoyama.ac.jp/phys/index.html


青山学院大学 理工学部 物理・数理学科 教授
竹内 康博
Yasuhiro Takeuchi
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