教員リレーコラム~知の並木道~

リレーコラム第11回 (2011年10月24日)
マクロとミクロのハザマ

文:理工学部 物理・数理学科 助教 高峰 愛子

高峰 愛子 教授
高峰 愛子 助教
この世の中に存在する物質は、すべて原子からなりたっています。原子は正電荷を帯びた原子核を中心にもち、その周りに負電荷を帯びた電子が雲で覆ったようにまとわりついています。そういった身の回りに普通に存在する原子は、基本的に安定な低い状態にあり、大きさは約1億分の1センチメートルです。私たちが日常で目にするようなマクロな大きさのものがおこす現象は、大抵古典力学で説明できますが、原子程度のミクロな大きさになると古典力学では説明できない現象が起こります。これが、量子力学の世界です。
量子力学は、全てのものが波としても粒としても振る舞うとし、あらゆる現象を見事に説明してきました。原子内で原子核と電子がお互い逆の電荷を持っているにもかかわらず、これらがくっつかずにいることができるのは、よく粒として表現される電子も波としての性質を持つためです。私たち人間もそれを素に成り立っていると考えるとなかなか感慨深いものがあります。

では、量子力学と古典力学の境界はどこなのでしょうか。そこでは何が起こっているのでしょうか。量子力学は古典力学を内包しているはずなので、境界がないと言ってもいいのかもしれませんが、私たちの日常的な直観とはかなり異なる描像を与えます。それは何故か。いまだに物理学者の頭を悩ませている問題のひとつであり、「シュレディンガーの猫」に代表されるパラドックスが存在しています。
ミクロともマクロともつかない量子と古典の狭間にある領域の「大きさ」をメゾスコピックといい、近年盛んに研究が行われています。有名な例として超伝導体、量子ドットなどがあります。他にも、原子にレーザー光を当ててエネルギーを与え、原子を高励起状態へ持っていくと、場合によっては原子の大きさは1万倍にも膨れ上がります。そうするとメゾスコピック系として扱うことができるので、まだ完全に解っていないといえる量子力学と古典力学のハザマを知る手がかりとなり得ます。

更にそういった原子が極低温状態にあると、原子同士に強い相互作用がはたらくので、集団でのみ起こる効果も観測され、原子物理と固体物理やプラズマ物理の架け橋になり得ると注目されています。
私は日々そういう原子をつくってその特性を調べる研究に取り組んでいます。自分で設計・製作したお手製の装置に囲まれ、それらを用いて原子を操り、そこから自分の知りたい自然現象のエッセンスを抽出するという楽しい毎日を送っています。ミクロもマクロも今のところ物理学で説明できていない事が実はまだまだたくさんあり、世の中がどういう法則の基に成り立っているのか、研究者人生をおくる間に少しでも理解することを目標として研究を続けています。

あるテレビ番組に出演した際、できるだけ平易な言葉で説明しようと心がけているのですが、なかなか難儀する事がありました。これは自分も本質をきちんと理解していない証拠なのかな、と思い当たる節もあり、今後一般の方にも分かりやすく伝えられる研究者になりたいと思っています。
量子力学はいわゆるミクロな世界でだけでなく携帯電話や光学ディスク、パソコンなど身の回りの物にも応用されています。量子力学はその原理探求も応用も今後の発展が期待されます。このコラムを読んでいる方の中からも、日本が誇る技術を開発する技術者やその土台を支える科学者を目指す方が出てくる事を期待しています。

次回のコラムは、情報テクノロジー学科 山口 博明 教授 が
「ヘビと同じ原理で移動する波動歩行ロボット」についてのお話しを
リレーしてくださいます。ご期待ください。

物理・数理学科のホームページ
http://www.agnes.aoyama.ac.jp/phys/index.html


青山学院大学 理工学部 物理・数理学科目 助教
高峰 愛子
Aiko Takamine
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