青山学院大学 理工学部 研究者情報

青山学院大学 理工学部
化学・生命科学科 教授/博士(理学)
坂本 章
Akira Sakamoto
「分子からの手紙を読む」

■分子からの手紙 -分子分光学-
分光学は、文字どおり光をその波長(色)で分ける学問であるが、もう少し具体的には、光と物質の相互作用によって生じる光の強度やエネルギーの変化から、その物質の原子や分子の構造を調べる学問と定義できる。
分子の世界は極微の世界であり、どんな顕微鏡を使っても動きまわる分子の姿を、直接見ることは今のところ難しい。そこで、分子が光に託して私たちに発信してくる「スペクトル=光のエネルギー(振動数)に対する光の強度分布」と呼ばれる"手紙"を解読(解析)することで、私たちは間接的に分子の姿をとらえることが可能となる。

■分子のスナップ写真
暗闇でストロボをたいて写真を撮影すると、ストロボが光った瞬間のスナップ写真が撮れる。分子のスナップ写真、つまり"ある瞬間の"分子からの手紙(スペクトル)を測定して、分子が時々刻々変化していく様子を観測するためには、ナノ秒(10億分の1秒)、ピコ秒(1兆分の1秒)、フェムト秒(1000兆分の1秒)といった超高速のストロボが必要となる。 近年のレーザー技術の進歩により、このようなごく短時間しか光らないレーザーが利用可能になった。私たちは、そのようなレーザーを用いて、非常に短い寿命の分子(例えば光のエネルギーを吸収して励起された分子など)の測定と解析を行っている。

■機能性物質科学への応用
有機EL素子や有機太陽電池のように電荷の移動をともなって機能を発現する物質では、光による励起状態だけでなく、電荷を持った状態(ラジカルイオンなど)も重要な役割を果たす。 一般に有機ラジカルイオンや2価イオンは、大気中では非常に不安定である。そこで、私たちは、酸素・水ともに0.1 ppm(1000万分の1)以下に保たれた非常にきれいな環境を作りだし、その中でこのような不安定な分子の分光測定と分子構造の解析を行っている。

■浮世絵とその版木への応用
私たちは、持ち運び可能なラマン分光イメージング装置の開発も行っている(共同研究)。この装置は、試料に触れることなく(非接触)、また試料を壊すことなく(非破壊)、分子からの手紙(ラマンスペクトル)に基づく面でのイメージングが可能である。 これを用いて江戸時代の浮世絵とその版木を測定し、当時使用されていた色材を同定した。例えば、江戸時代後期の浮世絵「阿波の十郎兵衛」(歌川国芳画、1847年頃)の緑色は、黄色顔料"石黄"と青色顔料"プルシアンブルー"の混色によって表現されていたと分かった。

今後、分子からの手紙をさらに解読することで、機能性物質科学や生命科学だけでなく、文化財研究などさまざまな分野に貢献していきたい。

研究テーマ
物理化学,分子分光学,構造化学
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